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米国スタートアップの今と未来

Andreessen Horowitz、シリコンバレーのベンチャーキャピタル業界に現れた超新星

 

シリコンバレーにいると日本に住む知人から「米国でNo.1のベンチャーキャピタルはどこですか」という質問を受けることがあります。
日本でもSequoia Capital、KPCB(Kleiner Perkins Caufield & Byers)、Accel PartnersのようなVCは有名だと思いますが、他にもGreylock Partners、New Enterprise Associates等の歴史と実績のあるVCは数多く存在します。個人的にはこの質問に対する答えとして、いつも「Andreessen Horowitz」の名前を挙げるようにしています。

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Andreessen Horowitzとは?

Andreessen HorowitzはシリアルアントレプレナーであるMarc AndreessenとBen Horowitzによって2009年に設立された若いベンチャーキャピタルです。設立から3年足らずの2012年に、1.5 billion(1500 億円)のファンドレイズをたった3週間で終えてしまったことが話題になりました。

それによって彼らの運用ファンドの総額は2.5 billion(2500億円)にものぼり、1972年に設立された歴史あるSequoia Capitalの2.4 billion(2400億円)を超えています。ちなみにAndreessen Horowitzの1号ファンドは$300M(300億円)であり、先日伊佐山さん達が立ち上げられたWiLの1号ファンドとおよそ同額規模になっています。

創業者のMarc AndreessenとBen Horowitzは、VCを立ち上げる前にもOpswareというスタートアップを共同創業しており、2007年にHewlett-Packardに売却しています。二人はそれ以前のスタートアップからの付き合いであり、MarcはあのNetscapeのCo-founder兼CTOであり、BenはそのVice PresidentおよびGeneral Managerという立場でもありました。Marcは現在FacebookとHPの取締役を、BenはFoursquareやJawboneの取締役を務めています。Ben Horowitzのブログは全てのスタートアップ関係者にとって大変参考になる内容なのでおすすめです。

marc_ben左: Marc Andreessen、右: Ben Horowitz

対象とする投資セクターは、コンシューマーインターネット、ビジネスソフトウェア、モバイルサービス、インフラシステム、ストレージ、コンシューマーエレクトロニクス等のIT全般が対象となっていますが、あくまでソフトウェアが主役となる領域にこだわっているようです。したがって、クリーンテックやエネルギー、EV、バイオ、ナノテク等のハードウェア主体となる分野には基本的に投資しない方針と聞いています。

彼らはSeedからSeries D等の後半のラウンドまで幅広く投資を行っていますが、最近ではSeedでY-combinator出身の有望株に集中投資しつつも、Series B以降の特に大型案件への投資で話題になることが多いです。そのため、CB insightによれば、ディールあたりの平均出資額は約$28M(28億円)とかなりの金額になっています。

これまで274社に投資を行い、18社Exitさせた実績があります(2013年秋まで)。投資の代表的な事例としては、日本でも有名になった下記のようなスタートアップが挙げられます。

FacebookTwitterInstagramZyngaSkypeJawboneFoursquareGrouponBoxAirbnbPinterestFabStripeGitHubLyft

Andreessen Horowitzは、未だVCから引く手あまたになっているY-combinator出身のスタートアップに対して、最も多く投資できているVCの1つです。そのため、個人的な所感として彼らの投資先にハズレは少なく、最近成長しているスタートアップのトレンドをつかみたいのであれば、簡単に彼らのポートフォリオ一覧をチェックしてみることをおすすめします。

 

Marc AndreessenとBen Horowitzが着目したのは、スタートアップが従来のVCに抱いていた不満

Incomplete network:

従来のVCのパートナーはそれぞれが独自のネットワークを持っているものの、プライドや社内政治的な事情が邪魔をして、パートナー間でそれを共有することが少なかったそうです。また当然パートナー自身の経歴によって得意な業界が限定されており、さらに業界だけではなく、経営、エンジニアリング、マーケティング、PR等、機能面でも彼らのネットワークが偏っていることが大半でした。

Hard to access:

VCのパートナーは常に忙しく、実はスタートアップが顧客候補等を紹介してもらえる機会もそれほど多くはなかったそうです。起業家がミーティングのために会いに行っても、ロビーで45分以上待たされることも珍しくはありませんでした。またVCに対して誰かの紹介を依頼する場合、事前にどのような情報が必要になり、どのようなプロセスを辿る必要があるのかも不透明でした。

 

Andreessen HorowitzがVC業界で成功するために重視した3つのポイント

1. 何よりも起業家を尊重し、彼らを一流のCEOに育てることを徹底重視するカルチャー

Andreessen Horowitzは伝統的なVCのように成長期に入ったスタートアップの起業家をプロのCEOに交代させるようなことはせずに、起業家自身がプロのCEOに成長するための手助けを重視しています。またAndreessenではユニークな社内ルールが存在し、パートナー達が起業家とのミーティングに遅刻した場合には、1分毎に10ドルの罰金が課されます。そのような単純な例を見ても、起業家に対して常に敬意を示すことが社内の根本原則となっていることが窺い知れます。加えて、彼らがロールモデルにしているのが、Creative Artists Agencyという米国の一流芸能プロダクションというところも特筆すべき点です。まるでハリウッドスターを育てるかのように起業家の成長を支援しているのかもしれません。若いファンドでありながらも、このようなカルチャーを持つことが若い起業家達からの支持を集めている理由の1つになっています。

2. 全ての業界および機能を網羅するネットワーク

Andreessen Horowitzは従来のVCに欠けていたネットワークを徹底的に強化しています。オペレーティングパートナー(バリューアップ担当)は、フルタイムで様々な業界、業種、機能に関するネットワークを広げることに多くの時間を費やしているようです。従来のVCと差別化するべく、スタートアップが各パートナーの持つ全てのネットワークを活用できるような体制を構築しています。能力やパッションに溢れる若い起業家に最も欠けているネットワークを十分に補うことで、彼らに明確なベネフィットを提供しています。

3. バリューアップチームが主役となる組織

投資担当の約2倍の従業員がバリューアップチームに所属しており、オペレーティングパートナーの人数も投資担当パートナーの3倍程度です。2014年2月時点において、社員90名のうち投資担当が25名(うちGPは7名)に対して、45名は投資先のバリューアップを支援するプロフェッショナルです(残り20名はバックオフィス)。バリューアップチーム45名の内訳は、市場開拓 15名、技術人材紹介 12名、エグゼクティブ人材紹介 7名、マーケティング 7名、コーポレートデベロップメント 4名であり、過去にご紹介したGoogle Venturesと比較するとビジネスデベロップメントや人材紹介に強みを持っています。メンバーの経歴としては、スタートアップ、大手IT企業、プロフェッショナルファーム出身者が多く、投資担当以外でのファイナンス出身者は少数になっています。
ちなみに報酬体系に関して、投資担当パートナーでもサラリーは市場水準よりもかなり低く抑えられている一方で、成功報酬が市場水準を上回るように設定されているようです(創業者の二人はサラリーなし)。そういった意味でもあくまでバリューアップを最も重視するファームになっています。

 

これまでの事業支援の実績(2009年6月〜2012年1月)

  • Fortune 500やGlobal 2000に選ばれる大企業のエグゼクティブに対して、投資先企業を累積で3000回以上も紹介
  • 4000名以上のエンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャー等とのネットワークを保有し、これまでに投資先企業に対して採用候補者を約1300回紹介、約130名の採用に成功
  • 投資先のかわりに様々なメディアとのやり取りを400回以上実施

設立からたった2年半でこれだけの支援を行ったことは驚きであり、パートナーを初めとした従業員達の並々ならぬ努力、ハードワークが窺い知れます。

 

まとめ

近年では米国でも伝統的なベンチャーキャピタルだけが活躍しているわけではなく、以前ご紹介したGoogle Ventures、そしてAndreessen Horowitzのような事業会社に近い新しいベンチャーキャピタルが世代交代の波を起こしています。シリコンバレーではたとえ支援する側であっても、CVCではGoogle Venturesが、VCではAndreessen Horowitzが設立から3年でトップファームへと成長するようなスピード感があります。

日本でもこのままスタートアップ業界が中長期的に成長し続けることができれば、Andreessen Horowitzのように巨大ファンドに成長し、スタートアップの事業支援の実績を華々しく公表できる国産ベンチャーキャピタルが生まれてくるかもしれません。

 

 

 

写真その他情報ソース:

The Silicon Valley Tech Venture Capital Almanac
CrunchBase
Andreessen’s Firm Raises $1.5 Billion
Why Has Andreessen Horowitz Raised $2.7B in 3 Years?
Ben Horowitz: “It Took About 3 Weeks” To Raise Our $1.5 Billion Fund
Transcript: The keys to Andreessen Horowitz’s success
VC in 2014: Andreessen Horowitz’s Scott Kupor on Why Fears of a New Tech Bubble Are Overblown
Andreessen Horowitz HP

Andreesen Horowitz: Capital’s New Bad Boys
ANDREESSEN HOROWITZ: Here’s The Magic Formula For Building Massive Companies

 

 

 

 

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